
学術誌で論文発表の新発見! 海の深さによって生息するアンモナイトの種類が異なることがわかった!
【ちょっとマニアな古生物のふしぎ】古生物学者・相場大佑先生が見つけた古生物のふしぎ
2025.06.04
古生物学者:相場 大佑

これらの化石がどんな種類なのかもあまり詳しく調べられていなかったので、今回改めて詳細な分類を行うことにしました。その結果、7種のアンモナイトと2種のイノセラムスに分類され、そのうち5種のアンモナイトと1種のイノセラムスは、この地層から初めて発見されたものであることがわかりました。これによって、いくつかの新しい発見がありました。


さらに、トゲのあるバネ型の「ハイファントセラス・トランジトリウム」も見つかりました。この種類は僕が博士号を取得した際に、どの時代から出るのか、殻の形にどのくらい個性があるのか、などを北海道で詳しく調べた種類なので、やはりすぐに気づくことができました。
「ポリプチコセラス」という、クリップのような独特な形をしたアンモナイトも3種見つかりました。殻の凸凹や曲がり具合などから種を見分けられます。
また、今回調べた29個のアンモナイトの特性を見てみると、「異常巻」と呼ばれるグループが半数以上を占めていることもわかりました。これに続いて、突起などを発達させる種類も目立っています。これに対し、北海道の同時代の、より沖合の深い海でできた地層からよく見つかる、装飾がほとんどないアンモナイトはほとんど含まれていませんでした。このことは、浅海では異常巻や装飾型のアンモナイトがより多く生息し、殻の装飾が弱い種類の生息数が少なかった可能性を示しています。

この研究は、岩手県立博物館の望月貴史さんと一緒に行いました。2月の雪が舞う寒さの中、地層の厚みを測ったり、砂の粒の大きさを記録したりと大変なフィールドワークでしたが、望月さんの地層の知識とサポートがあったおかげで進めることができました。
このように、どんな種類の化石がどこから見つかるのかを調べることは古生物学の基本ですが、実は古生物学だけでなく、たとえば現生生物を扱う昆虫生態学でも同じで、「どこにどんな昆虫がいるか」をまず知ることが大切だと、知り合いの研究者が話していました。
今後もいろいろな地域のアンモナイトを調べて、一種一種の空間的・時間的な分布を明らかにすることが目標です。
相場 大佑
深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現職。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに2種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。
深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現職。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに2種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。